11回目の冬景色と感謝

この場所で迎える冬もお蔭様で11回を数えます。思えばあっという間に日々が過ぎているような気がします。この場所で一人で始めた小さな店。当時は牛丼激安戦争真っただ中で、飲食店は安価な事がトレンドの時代でした。

激安でもない、宣伝も出してない・・・そんな小さな店の開店当時は、それはもう寂しくって苦しいものでした。そりゃそうです、誰も知らない店にお客様が来るという事は無いわけです。今はInstagramなど、多くの人に届くツールがあるけれど当時はまだ「ガラケー」の時代だったのだから。

お客様が来なくて、毎日怖くて・・・。当時は夜22時まで営業していました。今でも忘れないのですが、ある夜女性の方が入ってこられて「お茶する気はないんですけど、この辺の店スグ潰れるんで、この店がいつ潰れるのか楽しみにしてます」とだけ言って出ていかれました。お客様が来なくて全然知ってもらえなくて、でも毎日一生懸命仕込みをして「きっと明日は!」って頑張っていたので、とってもショックでした。「いつ潰れるか楽しみにしている」その言葉は今でも私の心に刺さっています。ずっと。

その当時は「身体に優しい」という事はカフェに於いては重視されてない時代で、ガラケー時代で「映える」も無かったわけですが、徐々に「akaiitoって美味しいよ」「akaiitoのスイーツ可愛いよ」「akaiitoのチーズケーキはご褒美スイーツ」と、色々な場所で話して下さるお客様も増えて沢山の取材にも来ていただけるようになりました。思わぬところで噂を聞いていっぱい感謝で泣きそうな事も多かったです。ありがとうございます。

辛いことは山のようです。事業は本当に大変で、それを身をもって体験しています。くじけそうになる時もあります。昨今はコロナ禍でお客様のご来店もとても減って、遠くからお越し下さるお客様のお顔は長らく見なくなりました。多くの店が廃業されました。その度に心が痛くて苦しくなって、怖くなって

「あぁ・・もう疲れたな・・」

って、泣きたくなる事も多々あります。でも、そんな時は何故か顔なじみのお客様がひょっこり顔を出して下さって「akaiitoのチーズケーキは本当に美味しい」「紅茶も美味しいなぁ」なんて、笑顔でお話しくださって、心のカンフル剤です。頑張ろう!そう思わせていただきます。こうして長い間に「スイーツ食べるならakaiitoやわ」と、仰って下さるお客様とのご縁をいただけた事が何より人生の幸せです。

実際「もう無理かも」と思った事もあります。心が折れてしまって、コロナ禍は長すぎて・・・でもそんな時「akaiitoが無かったらもうお客様にお会いする事が無くなってしまう」という事に気が付いたんです。引っ越したお客様もakaiitoといういつでも帰れる場所を失ってしまいますし。多くのご縁がここにあって、お客様のストーリーもここにある、ここは頑張って耐えないと!!そう思いました。

「あぁ・・・もうアカン・・・」そんな気持ちになったら、何故かいつもの笑顔のお客様がご来店下さいます「どしたん?」「いや、もうちょっと辛くて」「大丈夫、akaiito好きな人はいっぱいいるよ、みんな来てくれるから元気出して!」こうして元気をいただきます。ありがとうございます。

先日、パフェの事をInstagramにアップして下さっていたお客様ですが、男性お一人でのご来店だったんです。それでpostの中にこんな一文がありました「客が次々と入れ替わる事もなく客がウェイウェイ言うでもない落ち着いた静かな空間で実に私好みの空気感です」。初めてご来店下さったのですが、男性お一人でご来店のお客様が多いのもみなさんこういうお気持ちなんだろうなと思って拝見させていただきました。お客様は本当に素敵な方が多いです。恋が実るカフェと言われていて、取材なども結構来ていただくのですが、この空気感がそうさせるんだと思います。akaiitoが心地いいと思われる感性で、もう共通点があるんですよね!

大切な人を「akaiitoに絶対連れてきたかった」そう言っていただける事

先日も奥さまがランチを召し上がりにいらして「どうしても主人にも食べてほしくて」と、ご夫婦でご来店下さいまして「身体が欲するというか、どうしても食べたくなるんです。akaiitoのランチ」そう仰ってくださって、ご主人も「美味しい、美味しい。こんな料理は初めて食べた!人参も甘いし全てが手間暇で驚きでした」なんて仰ってくださって、こんな感じで「大切な人にも!」って、ご一緒にご来店下さる事がすごく嬉しいです。チーズケーキも「美味しい」「美味しい」と大絶賛いただきました。

こんな風に「akaiitoに来てよかったな」ってお時間をお過ごしいただけると本当に嬉しいです。そして「よし、頑張らなくちゃ」と思わせていただきます。

毎日毎日お客様からの「美味しい」「こんなチーズケーキ初めて食べた」いろいろなお言葉がとっても嬉しく勇気をいただいています。

11回目の冬を迎えるまで、本当に色々な事がありました。お客様みなさまに愛していただいて、お蔭様でずっと営業しています。これからも皆様にとって「ほっこり暖かな場所」であれるよう努力を重ねてゆきます。

店の裏で栽培しているレモンが色づいてきました。今日、プチプチを巻いて温かくしてあげました。2個しかないので・・・どうしようかな?と思っています。あまりに貴重で、あまりに愛しいレモンです。蜂蜜に漬け込んでレモネードかな??

いつでもほっこりほっとしにいらしてくださいね。心よりお待ちしています。

恋するようにカフェ、旅するようにカフェ。

akaiito maison