小学生の頃、学校から帰ると、よく母が美味しいケーキを焼いているところでした。「ただいま」とランドセルを放り投げると、ケーキの焼ける甘い匂いが漂ってきます。学校で、何かしらの悲しいことがあって、心が重く、こたつに入り、じっとしている時もありました。

私は周りの子とは少し違う子供だったと思います。そして、他の子供たちと遊ぶよりも一人でいるほうが楽しいと感じていました。学校の登下校はみんなで一緒で、その時間をあまり楽しいとは思えなくて、一人の時は、空を見上げながら「あ、あの雲はゴジラみたい」と思ったり、通学路で鎖に繋がれてやせ細った犬に給食のコッペパンをあげて「元気になってね」と声をかけて回ったりしていました(昔は、犬は外で鎖に繋がれていることが多く、餌は残飯で、その餌すらあげていない、世話をされていない犬がいっぱいいたんですよ)。

実際に「変わった子」だと言われることが多かったと思います。ただ、その普通とは違う感覚は、大人になって、発想力や行動力にもなって自分を助ける力になってくれていますし、色々な才能を持った方々と出逢わせてくれています。

小学校は大人の足でも遠く、子供にとってはすごく遠かったので、家に帰ってくると、実際「ほっ」としました。

母が焼いてくれるお菓子は、マドレーヌ、マフィン、バナナケーキ、林檎ケーキ、時には自家製カスタードの入ったシュークリームなど、様々でした。木箱に入ったリプトンティーを選んで、ケーキが焼けるのをじっと待つのが楽しみでした。

小さな心は傷つくことも多かったけれど、母のケーキを食べる時間は幸せの時間でした。「学校行くの嫌だな」って思う日でも、母のケーキは優しい気持ちをいっぱいくてました。

今、その幸せを他の人たちにも分けていきたいと思っています。毎日毎日ずっと12年、心を込めてチーズケーキを焼いています。材料選びからレシピも考え、低温で80分もかけてじっくりとお焼きして、お客様へのお渡しまで、全てを一人で責任を持って行っています。アルバイトさんに任せたり、レシピを渡して他の会社に外注することも一切ありません。

あの頃の私のように、どなたかの心が悲しいときに、「akaiitoのチーズケーキを食べれば元気になれる」と思ってもらえるように、優しく寄り添えるように。そして絶望している誰かの命を救えるかもしれないという思いで、私はチーズケーキを作っています。大袈裟ではなくです。

akaiitomaisonの手作りチーズケーキは、お持ち帰りしていただけます。悲しい日には、自宅で安心しながら召し上がっていただける事を願っています。。

どんな日も、過去には戻れません。だから、今を大切にしましょう。きっと素敵なことが起こると思います。そしてakaiitomaisonは、akaiitoのチーズケーキを大切に思って下さるお客様皆様を大切に思っています。

店主。