夜が深くなる頃、
ちいさな隠れ家「akaiito」の厨房では、
ひとつの習慣が静かに始まります。
チーズケーキを焼くための大切な「ドロワ」。
その重たい型を、ひとつひとつ丁寧に磨くのが店主mumuの日課。
フランスで1814年に創業した老舗製菓メーカーのこのドロワは、頑丈で頼もしく、シェフやパティシエから愛され続けてきた名品です。
そんな道具を使えることに、心から感謝しています。トキメキです。
「今日もありがとう。」
「明日もよろしくね。」
そんな思いを込めながら、紙を滑らせる私の手。
毎日のお掃除は、まるで瞑想のよう。
道具が輝きを取り戻すたび、
私の心も澄んでいきます。
昨日のこと。
お正月用に「RÉGAL CHEESECAKE・Classe Supérieure・Art de Pour Crème」をお買い上げくださったお客様が、
「すごく美味しくて、どうしてもお店で食べたくなったんです」
と、お嬢様と一緒に来店してくださいました。
「美味しい、美味しい!」と、笑顔で絶賛してくださったその姿。
それはまるで、私の心に光を灯す魔法のようでした。
お客様のそのお言葉が、私を動かします。
「絶対に美味しいチーズケーキを作ろう!」
そう、心から思えてとても嬉しくて、希望が湧いてきます。
夜な夜な、ドロワを磨くこの時間は、お客様への感謝と、
明日への決意を静かに育む大切なひととき。
「美味しいものを食べたなぁ」
「また食べたいなぁ」
そう思っていただけるように、
今日も私は磨き続けます。